偽物が本物を凌駕する瞬間こそリアル『累-かさね-』実写版、土屋太鳳と芳根京子の圧倒的な演技力が素晴らしい!

「教えてあげる、劣等感ってやつを」

原作は松浦だるまの漫画作品。

キスした相手の顔を奪い取る(反転させる)ことが出来る不思議な口紅がキーとなり、顔に大きな傷を持ち、容姿に深いコンプレックスを持つ少女累-かさね-(芳根京子)と美しき美貌を持ちながらも持病のため花開かずにいる女優、丹沢ニナ(土屋太鳳)のダブルキャストで贈るサイコホラー。

『累-かさね-』

何かのきっかけで原作のさわりだけ読んだことがあるものの、そのほとんどは未見。

卓越した演技力を持ちながらも、嫉妬と劣等感に苛まれる累-かさね-が、顔と声を入れ替える口紅の力を使い、丹沢ニナの顔を奪いながら舞台女優として活躍していく姿を描く。

人は”何か”になりたい!
憧れのあるものに出来るだけ近づきたい!
なぜ自分は”あの人”ではないのだろう?
あの子と比べて自分は・・・。

偽物が本物を凌駕する瞬間こそがリアル。

もちろん、口紅の能力は虚構。
しかし、後半になるにつれて爆発する人間の嫉妬と欲望の連鎖はあまりにも現実的。

「あなた、私の人生の全てを奪い取るつもりでしょ」

目まぐるしく顔が入れ替わる累-かさね-と丹沢ニナ。それを演じる土屋太鳳と芳根京子の圧倒的な演技力に脱帽しました。

特にクライマックスのサロメの舞台シーン、演じる土屋太鳳の熱量がとにかく凄まじいので一見の価値ありです!

特徴的なのは、最初二人の外見だけが入れ替わっていたはずなのに、物語が進むにつれて内面(性格)までもが反転していくこと。見た目が変われば自信に繋がり、内面や行動までも変えていく。空恐ろしいほどのリアリティの現実ここにありと言ったところでしょう。

ここで思い出すのは、1984年に薬師丸ひろ子主演で大ヒットした

『Wの悲劇』

である。時代背景が異なるため今だとどうしても昭和的なノスタルジックな雰囲気を感じてしまいますが、不思議と物語の構成やプロットが良く似ていることに気付かされます。

欲望や嫉妬剥き出しの世界、ドロドロとした人間関係、事件をきっかけとした女優の成り上がりストーリー。

初々しさや美しさの方向性、描き方の違いはあれど、どこかで共通の感覚を見出してしまうのは不思議なものです。

これは改めて原作を読んだ方がいいということですかね。久しぶりに恐ろしい作品に出会ってしまった!

映画『累 かさね』のmueponさんの感想・レビュー | Filmarks
mueponによる、「累 かさね(2018年製作の映画)」ついての感想・レビューです。