映画『search/サーチ』はとても現代的な映画です。普段私たちが当たり前のように使っているSNSやWebサービスがほぼ映画全編に渡って登場するからです。
そしてそれはどこか遠い世界を描いている訳じゃないリアルさを醸し出しています。
何にせよオープニングのシーケンスからやられてしまいました!
我々の世代では誰もが体験したことのあるWindowsのデスクトップ画面(壁紙)。
ログイン画面からして何もかも皆懐かしい・・・。
しかし、この映画の本質は懐かしさではありません。
何より驚かされるのは、映画全編に渡ってパソコン画面のみで物語が進行していくこと。普通に表現すればすぐに飽きてしまいそうなのに、 現代ツールとして馴染み深いFacebook、Instagram、Twitter、TumblrなどのSNSやYouTubeなどの動画共有サービスが当たり前のように登場し、そこから見た視点として常に視聴者が共有していける構成になっています。
そのため自分自身の日常体験と重ね合わせやすく、親近感が湧くと同時に最後まで飽きることは全くありませんでした。
16歳のマーゴットが突然失踪。家出なのか誘拐なのか行方不明事件として捜査が始まるものの真相は分からず、父親のデビッドは彼女のPCにログインして彼女のSNSにアクセスを試みる。そこには父親の前では明るく活発だった彼女とは別の姿があった・・・果たして・・・。
こういうストーリーを描く場合、大抵は負の側面から一方的によく分からないものとして断罪されることが多いですが、現代の深層心理というものをとてもよく捉えていて、現代における推理小説としてとても優秀。サイコスリラーとしても一級の出来映えでした。
同時に、個人を表現するツールがここまで多彩になった今、どれが自分自身なのか外側からは分かり難くなっているのも事実です。
日々当たり前のようにSNSに接していると、Twitterで投稿する内容とFacebook、Instagramでそれぞれ異なるのは当たり前だしサービスのカラーも違う。
どれも自分自身だとも言えるけども、他人からすると本質的な部分が見えにくくなっているのも確かです。そういった意味では若者がハマるサービスや承認要求、行動原理などを完全に理解するのは難しい時代なのかもしれません。
今年は「カメラを止めるな!」という日本映画でありながらも革新的な一本がありましたが、時同じくしてここまで素晴らしい映画に出会えるとは思いませんでした。
シナリオが優秀過ぎて「えっ、これまだ話が続くの?」と思わせるどんでん返しなストーリー。冷静に見ていても騙されない方が難しい。
そういった意味でこの映画は「カメラを止めるな!」同様、出来るだけ事前情報を仕入れずに見に行くことをオススメします。
今の時代を見事に映し出した映画でもあるので時が経てば内容が古びてしまう可能性も高いですが、今見ないのはもったいない・・・そんな一本です。