”その闇を知ったときに、名画は違う顔を見せる”
上野の森美術館で開催されている「怖い絵展」(Fear in Painting)を観てきました。
作家・独文学者、中野京子氏が2007年に出版した美術書「怖い絵」。刊行10周年を記念して開催される今回の展覧会は彼女が監修を務め、恐怖に焦点を当てたテーマを元に約80点の西洋絵画、版画を展示しています。
最大の注目作はビジュアルポスターにもなっている、ポール・ドラローシュが描いた『レディ・ジェーン・グレイの処刑』。16世紀に9日間だけ王座についたジェーン・グレイが反逆罪で処刑されようとしている最期のシーンを描いた作品で、ロンドン・ナショナル・ギャラリーを代表する名画が初来日。
ギリシャ神話やキリスト教の聖書を題材に語られる作品も多く、ただ単純に怖い、不気味さを描いた作品というよりは、人間の苦難や悲劇、女性の官能やエロス、恐怖と苦悩、地獄・異界・悪魔・天使など”死”をイメージさせる作品にただただ圧倒されます。最終的には人間の行いが一番怖いと言えるのかもしれません。
ただ、当時の時代背景や描かれた経緯(物語)を知らないと一見して「なぜ怖いのか?」という部分が分かりにくいため、女優・吉田羊さんが解説ナレーションをしている音声ガイド(550円)はぜひ一緒に借りることをおすすめします。全く情報を知らないまま感性で観るよりもガイドを使用することによって知識が補完されるため結果としてイメージが残りやすいからです。
「怖い」というテーマの切り口が魅力的なのか連日盛況で、休日だったこともあり100分~120分待ちでした。
館内も混雑しておりしっかり観たとしても2時間ぐらいかかることが予想されるため、ある程度余裕を持って行くことをおすすめします。それでも並んで観るだけの価値はあると感じました。上野の森美術館では2017年12月17日(日)まで開催しています。
怖い絵展 Fear in Painting / 上野の森美術館
- 会期:10月7日(土)〜12月17日(日)
- 開館時間:9:00~20:00(最終入館は閉館30分前まで)
- 入場料:一般1,600円/大高生1,200円/中小生600円